時代はスリップリングから無水銀コネクターへ

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静止体と回転体との間で電力や電気信号をやり取りするための製品として、これまではカーボンプラシの摺動によるスリップリング、まはた回転体と静止体との間に水銀を充填することにより通電するロータリーコネクタが存在していました。これらスリップリング、ロータリーコネクタの用途としては、フープめっき装置、半導体製造装置、ヒーターロール、包装装置、ポーラログラフの電極、風力発電機など数多くの産業機械に用いられています。

ただしスリップリングはその構造上、摩耗紛が発生し、そのための定期的にメンテナンスが必要であり、場合によっては摩耗紛の堆積による隣接回路とのリークなの問題が発生することがあります。またスリップリングは摺動接続のためノイズ(チャタリング)が発生しやすく圧電素子や歪みゲージなどの微細な信号線の伝送などには適さない場合があります。

一方水銀式のロータリーコネクタは接触抵抗が低く、大電流をコンパクトに流せる、またノイズがなく信号線にも対応できるなどのメリットがあるものの、水銀を使用していることにより水銀の漏洩、水銀規制、廃棄の問題、使用環境の制限(温度、振動など)などのデメリットがあります。

最近では水銀の代替としてガリウム合金を使用した製品もありますが、ガリウム合金は非常に活性な金属であり、接触している金属(この場合回転体素材と静止体素材)との間に容易に別の化合物を生成するため初期に設定していた合金の混合比率が変化し、このことによりガリウム合金の凝固点が変化し、場合によっては常温で硬化するとういデメリットがあります。またユーザーの仕様に合わせた特注製品の製作は困難で、基本的には標準品を使用することになります。

弊社のロータリーコネクタはこれらいずれの方法とも異なる遊星運動方式であり、世界的に見ても同じ構造の製品はなく、ヒサワ技研独自の製品になります。ヒサワ技研ではこの遊星運動式のロータリーコネクタに関して複数の特許を取得しており、また日々改良を重ねております。

スリップリングとロータリーコネクターの違い

スリップリングとは

回転体への通電機構として古くから用いられてきたのが、スリップリングです。スリップリングは、回転体の通電部にカーボンブラシ、板バネ、ワイヤなどを押し当て通電を行う摺動式の製品です。しかし、スリップリングは上述のように摺動による通電のため、磨耗粉の発生が避けられません。発生した磨耗粉はノイズまはたアーク放電の発生、隣接回路との短絡の原因となるため、定期的なメンテナンスが必要であり、特に大電流の製品に関しては製品形状が大きくなりまた寿命が短くなる傾向があります。

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液体金属式 (水銀、ガリウム合金式)ロータリーコネクターとは

液体金属式ロータリーコネクターは、回転軸と固定側の間隙に水銀などの液体金属を充填し、当該液体金属を介して給電する回転接続用コネクターです。この方式では通電部での摺動がなく、ノイズのない製品を達成しています。また接触抵抗が小さいため大電流をコンパクトに通電可能です。

一方でこのタイプの製品は液体金属をOリングなどで封止しているため、この部分においては摺動回転となるため、回転トルクが大きく、また封止部からの液体金属の漏洩や、隣接回路との短絡などの問題があります。また使用可能な温度範囲が狭いことや、真空環境、振動環境での使用できないなど、使用環境に制限があります。またユーザーの仕様に合わせた特注製品の製作は困難で、基本的には標準品を使用することになります。

最近では水銀の代替としてガリウム合金を使用した製品もありますが、ガリウム合金は非常に活性な金属であり、接触している金属(この場合回転体素材と静止体素材)との間に容易に別の化合物を生成するため初期に設定していた合金の混合比率が変化し、このことによりガリウム合金の凝固点が変化し、場合によっては常温で硬化するとういデメリットがあります。

 

【スリップリングとロータリーコネクターの比較】

スリップリング 液体金属式ロータリーコネクター ヒサワ技研式
給電構造 カーボンブラシによる摺動接触 ファイバーブによるシ摺動接触 水銀、ガリウム合金など、液体金属の充填による接触 ローラー集電子による転動式
ノイズ ×
メンテナンス 必要 不要 不要 不要
環境負荷 ×(ガリウムは○)
大電流 ×
特殊環境 ×
寿命
特注対応 ×

ロータリーコネクターのなかで、現在もっとも多く流通しているのは水銀を通電素材に用いた「水銀ロータリーコネクター」であり、世界的シェアを獲得しているのが米国メルコタック(Mercotac)社の製品です。しかし、この水銀品式ロータリーコネクターは、世界的に使用が規制されつつある水銀を使用していることから、代替製品の開発がのぞまれております。

水銀ロータリーコネクターの問題と解決法

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弊社独自の遊星運動式のロタリーコネクタ(回転コネクタ)です。ローラーベアリングのような構造であり、回転側と固定側に挟まれたローラー集電子が転動することにより回転部に通電できます。

RoHS指令や水俣条約による水銀の規制について

2006年に施行されたRoHS(ローズ)指令は、EU(ヨーロッパ連合)において電気・電子製品に含まれる6種類の物質の使用制限を規定しています。規定値を超えて含有している電気・電子製品はEU加盟国内で製造・販売できず、1,000ppmを超える水銀を含む電気・電子機器もそれに該当します。日本製品であっても、この基準に満たない電気・電子機器の販売は認められておらずヨーロッパへの輸出の妨げになるのです。

また、水銀および水銀を含む製品の製造と輸出入を規制する国際条約「水俣条約」は2013年に日本を含む世界約150ヶ国で採択されています。このような世界情勢をふまえると、今後数年の間で水銀ロータリーコネクターに代わる製品への移行が求められます。特に製品を輸出する大手企業様においては急務の課題といえるでしょう。

無水銀ロータリーコネクターの特長

上記の水銀ロータリーコネクターの将来性や問題点を考慮し、近年開発されているのが水銀を使用しない「無水銀ロータリーコネクター」です。

ヒサワ技研では、独自技術によって無水銀ロータリーコネクターを開発・製造しています。従来のスリップリングや液体金属を使用したものとは全くことなる構造であり、従来製品では不可能であった使用環境にも対応する可能性を秘めた製品です。

  • 摩耗粉の発生小
  • 水銀タイプでかかる廃棄コスト・手間なし
  • 微小信号通信可能(歪みゲージ信号など)
  • 水銀未不使用
  • 大電流にも対応
  • ノイズを低減
  • コンパクト設計
  • 低接触抵抗
  • 低回転トルク
  • カスタム設計可能